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サブスクリプションビジネスの市場規模と、運営開始前に抑えておきたい注意点

サブスクリプション

動画視聴サービスNetflixのように、月々定額で利用し放題というサブスクリプション型のサービスが増えています。モノを所有しない最近のライフスタイルに合致していることから、顧客の支持を得て市場も拡大傾向にあります。いま注目したいサブスクリプションについて市場規模や注目されている理由を説明します。

サブスクリプションビジネスの市場規模


サブスクリプションとは、商品やサービスを利用する期間に対して月額料金などを支払うビジネスモデルのことです。もともと新聞や雑誌をメインとして展開されてきた事業モデルでしたが、ここ数年でさまざまな分野に広がっています。世の中の知名度も上がり、「2019ユーキャン新語・流行語大賞」にノミネートされたことも記憶に新しいでしょう。

サービスの広がりに伴い、市場も年々拡大しています。2020年4月に矢野経済研究所が発表した調査結果では、2019年のサブスクリプションビジネスの市場規模は約6,835億円でした。それが、右肩上がりで成長し、2023年には1兆円を超える規模になると見込まれています。
(参照元:2022 サブスクリプション・定額サービス市場の実態と展望

サブスクリプションの代表ともいえる動画配信サービスでは、2017年から利用者が急激に伸び始め、その売上は世界の動画配信売上高の8割を占め、その後も成長を続けています。

サブスクリプションモデルを採用し、規模を拡大させているのは動画配信サービスだけではありません。音楽配信サービスを見てもSpotifyをはじめ、多くの定額配信サービスが登場しています。2016年にはダウンロードと定額制の売上高は逆転し、2020年には世界の音楽配信売上高の8割弱を占めると予測されています。
(参照元:https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h30/html/nd111320.html
では、なぜこのようにサブスクリプションビジネスが拡大の一途をたどっているのでしょうか。

なぜサブスクリプションビジネスが注目されているのか

近年サブスクリプションビジネスに注目する企業が増えている理由として、サービスを提供する企業側と利用する顧客側の双方にメリットが多いことが挙げられます。

顧客側のメリット

サブスクリプションは利用する期間や量に対し料金を支払うモデルのため、買い切りに比べ、初期投資にかかる金銭的負担が小さくなる利点があります。また、顧客のニーズにあわせたさまざまプランやオプションを提供している企業やサービスが多いので、自分の状況にあわせた選択ができ、無駄なサービスに対価を払う必要がない点や、いつでも最新の機能を利用できるといった合理性も魅力の一つです。

企業側のメリット

企業側にとっては、解約されないための努力はもちろん必要ですが、継続的な契約となるため、売上や収益の見通しが立てやすい利点があります。いつ何件売れるかを把握することが難しい売り切り型のビジネスモデルに比べ、安定化が見込めるビジネスモデルとなります。
さらに、顧客との接点を継続して持てることは、大きなメリットです。顧客に寄り添うことで、変化の激しい消費者のニーズにあわせたマーケティングも可能になります。

例えば車の販売のように単価が大きな買い物では、一度購入してしまうと数年から10年以上、企業と顧客との接点が途切れてしまいます。しかしサブスクリプションであれば接点を継続的に持ちつつ、さらなるビジネスチャンスに繋げることができます。
トヨタが運営している「KINTO(キント)」は、車乗り放題のサブスクリプションサービスです。顧客は頭金や登録費などの初期費用や、メンテナンス費用を支払わずに、月々の利用料のみで車を利用することができます。
対して、企業側のメリットはどうでしょうか。このような高額な商品のサブスクリプションの場合、月々の1件あたりの利益は、物販と比較した場合大きいとはいえません。しかし継続的に利用してもらうことでその商品・サービスのファンになってもらい、長期的な接点を持つなかで、新たな顧客を呼び込んでくれるなどといったことが期待できます。また、顧客の利用データを取得し分析することで、サービスの改善や機能拡充に役立てることもできるでしょう。

サブスクリプションビジネスの今後の将来性

先に触れた通り、調査会社によると、サブスクリプションビジネスは今後も市場が拡大していくと予測されています。現在はデジタルコンテンツやサービスのサブスクリプションが大半ですが、アイデア次第では、あらゆるサービスをサブスクリプションビジネスとして展開できる可能性があり、新規ジャンルでの進出も進んできています。

顧客側の視点から見ると、近年は「モノを所有しない」シェアリングエコノミーや「モノ消費からコト消費」など、消費に対する意識が大きく変わろうとしています。必要な機能を必要な期間だけ利用できるサブスクリプションは、この流れに沿っていることから、今後も利用が拡大していくと考えられています。このニーズの高まりを背景に、市場のさらなる拡大が期待されているという側面もあるのです。そのため、従来のビジネスモデルから転向し、サブスクリプションの事業を検討・展開する企業が増えています。

サブスクリプションビジネスモデルへの転向の注意点

収益面の安定性や顧客との関係性構築というメリットから、企業が既存のビジネスモデルから、サブスクリプションビジネスに転向する事例をご紹介しましょう。

まず、BtoBの事例を見ていきます。
例えばクリエイター向けのソフトウェアを提供するアドビシステムズでは、パッケージ型のCreative Suiteの提供をやめ、サブスクリプションのCreative Cloudに方向転換しました。
同様にマイクロソフトでもオフィス向けのソフトウェアOfficeシリーズをパッケージ販売からサブスクリプションのOffice365へとシフトし始めています。

では、BtoCではどうでしょうか。
Apple社が提供するApple Musicは、月額980円で音楽が聴き放題になるサブスクリプションサービスです。同社ではもともとiTunesで音楽のダウンロード販売サービスを行っていましたが、2015年からサブスクリプションへシフトし始め、市場シェアを伸ばしつつあります。

既存のビジネスモデルからサブスクリプションへの転向はメリットばかりにも見えますが、実はマイナスの面もあります。その一つが、請求管理が複雑になることです。
売り切り型のビジネスモデルであれば、商品代金を設定するだけでしたが、サブスクリプションの場合、ユーザーの購買意欲の推移によって価格の設定や、課金モデルを考える必要があります。そのうえ、選択したプランやオプションの有無によっても価格は利用者ごとに変わり、決して一律ではありません。なかにはサービス内容の変更などが頻繁に行われることもあるため、課金体系がより複雑になり、結果ますます管理が難しくなるのです。
また、サブスクリプションでは料金を月々支払う契約が一般的なため、毎月、請求処理を行う必要があります。これらにかかる負担は売り切り型のビジネスモデルと比較しても格段に煩雑で、解消のためには人件費を増やすなど、新たな経費が必要になることもあるでしょう。

このような複雑な課金計算の自動化を実現するためには課金ルールエンジンを持つ必要があります。課金ルールエンジンを自前で構築することも可能ですが、例えばサイオステクノロジーが提供する「SIOS bilink(サイオス ビリンク)」は、サブスクリプションビジネスに必要な定額計算のみならず、従量計算や定額と従量を組み合わせた課金計算などを行ってくれます。SaaS型の課金ルールエンジンを採用すれば、課金体系の変更にも柔軟に対応することができ、サブスクリプションビジネスのトライアンドエラーがしやすくなるメリットがあります。

まとめ

サブスクリプション市場は今後も拡大すると予測されており、これから参入を考えている企業も少なくありません。継続的に顧客と繋がることができ収益も安定するなど、企業にとってメリットが多いビジネスモデルですが、反面、請求処理などの手間が増えるといったデメリットもあります。SIOS bilinkのような課金ルールエンジンの利用は、このような問題に対して有効的な手段になるはずです。