そうですね。コスト削減を通じてビジネスの利益率を上げたり、手数料面でユーザーに利益を還元できたりとフィンテック市場は投資家たちの熱い注目を集めています。
それならば今後、フィンテック市場に参入する企業はますます増えていくのでしょうか。
確かにメリットは大きいですが、同時にセキュリティ面の課題もあります。ここでは、フィンテックの基礎知識や、活用されている分野、関連技術、メリット、今後の課題を解説します。
1. フィンテック(FinTech)の基礎知識
まずはフィンテック(FinTech)の定義と、世界中で注目されるに至った背景について解説します。
フィンテック(FinTech)とは、「Finance(金融)」と「Technology(技術)」の2語を組みあわせた造語です。少し抽象的な説明にはなりますが、いわば金融サービスと情報技術を組みあわせて生まれた新たなサービスや活動全般のことを指します。
資金調達、保険、保証、資産管理、送金といった金融業界のビジネスと情報技術の交流が、従来の消費生活とはまったく違った新しい可能性とビジネスチャンスをもたらす可能性があるため、大きな注目を集めています。なお、フィンテック関連事業を営んでいるIT企業のことをとくに「フィンテック企業」と呼ぶことがあります。
フィンテックが世界中で活用されている背景には、スマートフォンの全世界的な普及があります。
スマートフォンが多くの人の生活必需品になるにつれ、日常のあらゆる面がデジタル化していきました。スマートフォンは発売された当初に比べると目覚ましい進化を遂げており、従来は紙やパソコンを通して受けていた日常のサービスのほとんどを、今やスマートフォン上で簡単に受けられるようになっています。銀行の口座開設など対面での本人確認手続きが必須だったサービスも基本的にはスマートフォンだけで完結します。
こうしてデジタルが日常に溶け込むにつれ、個人がスマートフォン上で扱う情報に対する価値も変化してきました。
個人のデジタル利用により蓄積された膨大な情報は、ビジネスチャンスをつかみたい企業にとって非常に価値のあるデータです。すでに、いくつかの企業はデジタル情報の分析を通じて消費のトレンドや消費者のニーズを読みとり、新たなイノベーションや価値を生む商品を世の中に送り出し始めています。
また、とくにリーマンショック以降、スマートフォンの利用拡大と情報技術革新が進むにつれ、金融機関とタッグを組み業界への新規参入をはかるスタートアップ企業が次第に頭角を現すようになりました。これがフィンテック企業の源流です。アメリカなど海外のフィンテック企業が技術革新とサービスの拡大を競い、そこで生まれた技術のうち評判の高いものが日本に流入し一般化するというのが日本におけるフィンテックの流れといえます。
フィンテックの企業ランキングが集計・発表されたり、ニュース番組で特集が組まれるなど、フィンテック市場は注目を集めています。今後、お金に関する便利なサービスが生み出され、消費者の利用が進むことで、市場はますます活発になっていくでしょう。
2. フィンテック(FinTech)と関連性の高いテクノロジー
ここでは、フィンテックと関連性の高いテクノロジーをいくつか紹介します。
〈1〉ブロックチェーン
ブロックチェーンとは、情報をブロック単位で記録し、それらのブロックを一本の鎖で繋げるイメージで連結保管する技術のことをいいます。新たに加わった情報(ブロック)は原則としてチェーンの最後尾に追加されていき、後から順番を入れ替えることはできません。また、原理上、情報のコピーや改ざんもできないという特性があります。コピーや改ざんができないということは、つまり、不正が起こりにくいということです。ブロックチェーンはセキュリティ面においてはきわめて信頼性の高いテクノロジーであり、仮想通貨の取引にも用いられています。
〈2〉人工知能(AI)
人工知能(AI)とは、人間の知能をソフトウェアによって人工的に再現したコンピューターなどの総称です。とはいえ、ものごとを学習し、結果を予測し、判断し、推論するといった人間の能力をそっくりそのままソフトウェアで再現することは難しく、人工知能にできることは限られていました。
しかし、近年では「ディープラーニング」の手法が導入されたことで、人工知能の活用の幅が広がってきています。ディープラーニングは人間の脳神経回路をベースに考案された手法で、人工知能自身による継続的なデータ分析と情報相互の関連付けといった深い学習を可能にしました。ディープラーニングによって精度を高めた人工知能は、ある特定分野においては人間を凌駕するほどの成長をみせています。
〈3〉API
APIとは、「Application Programming Interface」の頭文字をとった頭字語です。ざっくり言うと、APIはアプリケーションやソフトウェア同士を連携させるための「窓口」としての働きをします。ソフトウェアを別種のソフトウェアと連携させることで利便性が向上する実例は多いです。身近なところでは、「googleアカウント」や「SNSアカウント」でログインすることにより、ネットショップ独自の会員登録が不要になるといったログイン認証の仕組みがAPIの具体例といえます。それぞれ別種の強みをもつソフトウェアをAPIで連携させれば、短所を補いあったり、ほしい機能を追加したりすることができるので、開発コスト削減やセキュリティの確保にも役立ちます。
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〈4〉生体認証
生体認証とは、個人の指紋や顔貌、声、静脈などを用いた本人認証です。指紋認証や顔認証によるスマートフォンのロック解除が最も身近な生体認証の例でしょう。生体認証を活用することで、たとえば、パスワード管理の甘さが災いして情報を抜き取られるなどの不正にまきこまれるリスクを減らすことができます。
〈5〉IoT
IoTとは「Internetof Things」の略で、直訳すると「モノのインターネット」です。いわば、家電や車などのアイテムをインターネットにつなぐことで操作性や利便性を向上し、生活を豊かにするテクノロジーをいいます。外出先からスマートフォンで家電を操作したり、声で家電を操作したりといった技術が身近なIoTの代表例です。
3. フィンテック(FinTech)が活用される主な分野
ここからは、フィンテックが活用される分野と、具体的な活用の実態について紹介していきます。
〈1〉保険
フィンテックの活用分野として、第一に「保険」があげられます。保険分野のフィンテックには「インシュアテック(InsurTech)」という別名があり、インシュアテックに期待されているのは、まったく新しいタイプの保険商品や保険の仕組みの開発です。
たとえば、従来は保険の窓口を訪れて保険商品を選ぶのが一般的でしたが、インシュアテックを活用すれば、自宅にいながらして様々な商品を比較検討できます。
また、窓口の販売員は手数料の高い商品をすすめる傾向があるため、販売員のおすすめ商品が本当に最適な商品とはかぎりません。その点、インシュアテックが提供するテクノロジーを利用すれば、収入や家族構成、目的に応じてアルゴリズムが最適な商品を自動検知するため、販売店の思惑に左右されないという安心感があります。もちろん、窓口で直接相談するメリットもありますが、データに基づいて客観的に良いとされる保険商品を選びたいという人にとって、インシュアテックを利用した保険サービスはやはり魅力的です。
サービスによっては、AIに審査を行わせるものもあり、今後も保険分野ではIT技術の向上に伴い手続きの効率化が進んでいくでしょう。
〈2〉決済・送金
今後は、フィンテックを活用したキャッシュレス決済(クレジットカード決済、QRコード決済といったスマホ決済など)が主流な決済方法となっていく見通しです。時間と効率と安全性を重視する現代社会では、決済・送金分野のフィンテックは重宝され、不可欠のサービスとしての地位をゆるぎないものにしています。
〈3〉資金調達
資金調達といえば、従来は銀行など金融機関が融資という形で行うのが一般的でした。しかし、フィンテックの登場をきっかけにその図式は変化しつつあります。資金調達分野におけるフィンテック活用の代表例といえば、「クラウドファンディング」と「ソーシャルレンディング」です。フィンテックの安全性と信頼度が、ネット上における個人間の経済活動を後押ししています。
〈4〉仮想通貨
ビットコインを代表とする仮想通貨は、新たな通貨として認められるまでになりましたが、仮想通貨の通貨としての信頼性を支えているのがフィンテックです。仮想通貨の取引にはブロックチェーンが用いられており、取引の安全性が担保されています。
〈5〉資産運用支援
フィンテックは資産運用支援にも活用されています。投資商品の選択や買い方をアドバイスしてくれるロボアドバイザーや、投資商品を比較検討して決済までできるアプリケーションなどが、資産運用支援におけるフィンテックの代表例です。投資信託や株の運用に興味はあるものの、何から始めて良いのかわからないという人にとって、おすすめの銘柄をピックアップしてくれる資産運用のフィンテックは頼もしい存在になります。
〈6〉個人資産管理
個人資産管理のフィンテックといえば、家計簿アプリです。アプリに、保有している銀行口座や証券口座を登録したりネットバンキングを連携させたりすることで、一元的な財務管理が可能になります。
4. フィンテック(FinTech)のサービスを導入するメリットと課題
ここからは、フィンテックのサービスを導入するメリットと、フィンテックが今後解決していくべき課題について解説します。
〈1〉フィンテック(FinTech)導入のメリット
フィンテックのサービスを導入することで、新規事業立ち上げのチャンスを得られます。フィンテックは、金融周りの利便性を高めることで消費者のさまざまなニーズに応えるものです。その一方で、事業者にとってのフィンテックは、業務を自動化して効率化とコスト削減を進めるための強い味方でもあります。フィンテックで既存の業務を効率化できれば、新たな商品やサービスの開発に充てるコストや人的ソースなどの余裕が生まれるからです。さらにいうと、フィンテックの効率化や自動化を最大限発揮できれば、それまでは30人必要だった作業が3人で十分になるなど、人的リソース面でのコスト削減につながります。ビジネスの利益率も格段に向上し、ひいてはユーザーが負担する手数料を抑えることもできるようになるでしょう。
また、フィンテッの導入によってユーザーの利便性が向上すれば、金融サービスの市場そのものの活性化につながり、長い目で見た場合のリターンも大きくなります。
〈2〉フィンテック(FinTech)導入における課題
フィンテック導入における課題は、やはり情報セキュリティです。フィンテックのサービスはインターネットを介するため、不正アクセスやサイバー攻撃からいかにして顧客の情報を守るかが重要になります。また、フィンテックで扱う情報は個人の重要な金融資産に関するものが多く、情報の漏洩で顧客が損害を被った場合には重い責任を問われる可能性があることを忘れてはいけません。便利なFintech(フィンテック)ですが、使い方次第では企業にとっても顧客にとってももろ刃の剣になります。情報漏洩が会社の危機に直結することを念頭に置き、考えられる限りの強固な対策を講じましょう。
また、災害やシステムの不具合が生じた場合のシミュレーションとトラブルの想定、それに対する予防策や対応策の検討と実施体制の確保も必要です。フィンテックの導入にあたっては、顧客が安全かつ自由にサービスを利用できるよう、情報セキュリティ上のリスク軽減について慎重に対応することが求められます。フィンテックの導入によってビジネスを成功させたいのであれば、何をおいてもセキュリティの信頼度を高めることが重要なのです。
フィンテック(FinTech)とユーザーの距離をいかに近づけるか
スマートフォンがこれだけ普及した現代においても、サイバー犯罪や不正アクセス、ネット上の詐欺などの情報が目につきやすいぶん、フィンテックを用いたサービスの利用を敬遠する人は少なくありません。そういったユーザーに利用してもらうためには、サービスの透明性と安全性を確保したうえで、周知する必要があります。
ユーザーに安心して利用してもらえるフィンテックを実現するために、決済インフラサービスを利用するという方法もあります。インターネット向け決済インフラサービスの「Stripe」は、支払いを受け付け、入金を行うウェブサイトとアプリを構築するために必要なあらゆる機能が盛り込まれたインターネット向け決済サービスです。スタートアップから大規模企業まで、あらゆる規模の多数の企業がStripeを利用しています。もちろん、不正使用防止対策も万全です。インターネット決済を伴うサービスを検討中でしたら、Stripeの利用をぜひご検討ください。
Stripeは、オンラインで支払いを受け付け、入金を行うといったサービスを構築するために必要な、あらゆる機能が統合された決済ソリューションです。オンラインで販売するインターネットショップや、SaaSなどのサブスクリプションビジネス、マーケットプレイス等のビジネスをサポートします。
仮想通貨や投資信託のロボアドバイザーの登場など、フィンテック(FinTech)は日々進化を続けていますね。